CRAFT BAKERIES in Paris 2018 ⑥

18/10/28

その日、私は待ち合わせをしていました。待ち合わせ場所のレストランからは少し離れるものの、近くのエリアに立ち寄りたい場所がありました。それが9区にある「Humphris (ハンフリス)」です。若草色の外観に、麦の穂をモチーフにしたロゴマークの同店は、パンはもちろんオーガニックの野菜やチーズ、自然派ワインやクラフトビールも扱う食料品店。父親のNicolaさんが野菜を育てパンを焼き、息子のDanさんが販売を担当しています。私が訪問したのは2018年に出来た新店舗で、それまでは道を挟んで向かい側の店舗でお店を営んでいたそうです。(旧店舗は現在改装中で、自然派ワインの専門店になるとか!)

窓際に並ぶ「Humphris」のパンは、どれも素朴な見た目。パリから車で1時間ほどのMantes- la-Jolieにある農場で、Nicolaさんは野菜を育て、パンを焼き暮らしています。週に3回(火・木・土)薪窯でパンを焼き、パリ郊外から市内の店舗に運んで販売するというスタイルです。オーガニックの小麦を厳選し、ルヴァン種を使い原始的な製法で焼くパンは至ってシンプル。全粒粉やライ麦、エポートル(古代小麦)を使用したパンが主軸で、自分たちの土地でとれた素材で、安心して食べられる食料としてのパンを日々つくっています。

訪れたのは日曜日の13時頃だったため、パンは少なく写真のパン棚はさみしい感じでしたが、(焼き日にパンが並んだ様子はHumphrisのInstagramでチェック!マルシェみたいにのびのび並べられたパンが素敵です。)ブリオッシュが数種類、食事パンが数種類ありました。形や大きさがバラバラで自然なのも好み。パンは全て量り売りなので、気になるパンを注文します。Danさん↓は英語も堪能で、色々と教えてくれました。

エポートルのパンとカンパーニュ、そしてブリオッシュを2種類購入。「Humphris」のブリオッシュは、ふわふわの軽い食感ではなく、ぎゅっと目が詰まったずっしり素朴なもの。日本ではあまり食べられないタイプの武骨なブリオッシュです。セミドライのフルーツが入ったものと、胡桃入りのシナモン味の2種類を食べ比べ。どちらも噛むほどに甘みがじんわりにじみ出てきて美味しかったなぁ。京都の「弥栄窯」のブリオッシュを思い出したのですが、それもそのはず、Nicolaさんが師事したSerge(セルジュ)さんは、「弥栄窯」の光軌くんの師匠でもありました。

Nicolaさんの焼くパンはしっかりと噛みしめるほどに奥深い味わい。つくる野菜はしっかりと味があって、健康志向のパリの人たちにファンも多いそう。都心と郊外を繋ぎながら、パン職人として、農家として地に足をつけながらしっかりと生きるNicolaさんの姿は、私たちにこれからの持続可能な生き方のヒントをくれるのではないかと思います。パンを焼き、お金をもらい、そのお金を野菜づくりに使い大地に還元していきたいというNicolaさん。物事は全て繋がっていて、大きな連鎖の中で生きているにも関わらず、私たちはとかくそのことを忘れがちです。「Humphris」のように、良質な食べ物をパンも野菜もチーズもお酒も分け隔てなく扱い、風通しの良いお店が日本にもどんどん増えたらいいな。

今度は「Humphris」のパン工房と畑も訪れてみたいなぁ…なんてぼんやり思いながら、北へ向かって早歩き。向かった先はモンマルトルの丘の近くにある眺めの良いビストロ「Le Grand 8」。ここで、パリで活躍する日本人ブーランジェ・稲垣信也さんと待ち合わせ。窓際の特等席でワインを飲みながら、本当にいろいろなお話を伺いました。その様子はまた後日、きちんとご紹介しますね。

パリのワイン業界では有名人だというEmilieさんが切り盛りするこのビストロ、料理も美味しいし、もちろんワインも美味しいし、お店の雰囲気も素敵でまた行きたい。この日は信也さんが焼いてきてくださった亜麻仁入りの雑穀パンを食事に合わせて頂くという幸せ!!

私にとって「美味しいものを好きな人たちと食べる時間」は、人生に欠かせない大切なものだということを、この旅でも改めて実感しました。食べものが、私の身体と心をつくる。食べることは、生きること。

 

つらつら綴ってきたパリのパン日記も今回で一旦おしまいです。お付き合いいただいた皆様、ありがとうございました。もうすぐそこに年末がせまって来ていますが、焦らずゆっくり、日々の「パンのある暮らし」が豊かでありますように!おやすみなさい。

AOI

 

おまけ

今回のパリ滞在中、私は美味しいもの好きの友人たちのおかげで、夜ご飯のお店に関しては完全にノープランで任せっきりでした。黙ってついていけば、美味しいものにありつける…そんな他力本願スタイル。中でも印象的だったのが、15区にあるエチオピア料理店「Habesha Restaurant」。1人1品注文すると盛り合わせて持ってきてくれ、みんなで手で食べます。私はベジタリアンメニューを注文。お皿にひいてあり、かつ手前にロールしてあるクレープ状のものが、私がずっと食べたかったエチオピアのパン「インジェラ」!世界各国色々なパンがありますが、この「インジェラ」臭いとか、美味しくないとか散々な言われようのパンなのです。紀元前100年頃から食べられているというエチオピアの主食で、イネ科の植物・テフの粉を水で溶いた生地でつくるクレープ状の発酵食品です。独特の酸味ともっちり食感が特徴で、そのまま単体だと個性が強いと感じましたが、料理と合わせて頂くと美味でした!まだまだ世界には食べたことがないパンがいっぱい!これからもパン旅はどこまでも続きそうです。