シアトルから車で北に1時間ほどの田舎町・エディソンに、「ブレッド・ファーム」はある。カントリー調のどこか懐かしい外観が目を引く。全ての行程を手づくりにこだわるこのクラフトベーカリーが開店したのは2013年のこと。オープンな雰囲気のキッチンではスタッフたちが楽しそうに働いている。見ているだけでこちらまで笑顔になってしまう、明るい空気感がこの店の魅力だ。創業当時は小規模なパンづくりからスタートし、街の食料品店やレストランにパンを卸したり、毎週末ファーマーズマーケットに出店するなどの積み重ねによって信頼を獲得し、今では地元住民から観光客まで足繁く通う人気店となった。
オーナーのスコットさんは「Quality of life(クオリティー・オブ・ライフ)」に重きをおく。健康的な生活をこころがけ、家族との時間を大切にすることが彼の人生の中心にある。同店は朝9時に開店するが、パン屋としては遅い方だ。これは、夜中から早朝に働く従来のパン屋のスタイルではなく、独自の働き方を考案し、大切な家族との時間を守りながら、今できるベストを尽くすという彼の生き方の現れのひとつだ。
可能な限りその土地で育ったオーガニックのものをパンづくりに取り入れたいという想いから、素材の探求も常に続いている。その一環で、何万種類もの麦を栽培する「The Bread Lab」とも親交が深い。「美味しくて栄養のあるパンを焼いて、みんなの健康的な生活の一部になりたい」そんなスコットさんと活気あふれる仲間たちが焼くパンは、当たり前の日常に溶け込み愛されている。
