美味しいパンを提供するのは、必ずしも「パン屋さん」だけとは限らない。オレゴン州ポートランドのカフェ「モウリス」は、すべてが可愛く洗練された一軒。白を基調とした気持ちの良い店内では、ボーダーのカットソーを着た笑顔の素敵な女性たちがてきぱき働く。手描きのメニュー、さりげない装飾、並べられた器…この店にあるものすべてが、丁寧に選ばれ、そして大切に使われていることが伝わってくる空間だ。「モウリス」では、オーナーシェフであるクリステン・マレーさんがつくる、フランスとノルウェーのアクセントを効かせたペストリーや食事が楽しめる。メニューはコミュニティから仕入れる食材から受けるインスピレーションによって毎日決まる。
焼き立てのペストリーや、みずみずしいサラダと共に、ぜひ食べてもらいたいのが鮮やかな「スモ―ブロ―」。友人であり、お互いに尊敬するシェフ/ベイカーである「リトル・ティー・アメリカン・ベイカー」のティムさんがつくるパンを使ったオープンサンドだ。北欧の伝統的なオープンサンドが、マレーさんの手にかかると美しい料理のような一皿に昇華される。仕入れたスペルトブレッドの味をメインに、旬の果物や野菜を組み合わせてつくる「スモ―ブロ―」には、地域の繋がりで生まれた美味しさがぎゅっと凝縮されているのだ。
8年前に彼女が惚れ込んだこの街で、「モウリス」は今、愛される存在になっている。