CORDUROY 東京都

初めてのおつかいは、このパン屋さんへ

「パン屋さん」という存在は、往々にして訪れた人をあたたかくやさしい気持ちにさせてくれるものだが、「コ―デュロイ」のそれはレベルが違う。扉をあけ、パンを選び、店を後にするだけで、気持ちの良い原っぱでひなたぼっこをしたような、そんな柔らかい気持ちにさせてくれるのだ。

ひだまりのような「コ―デュロイ」が誕生したのは、2011年10月。瑞江駅から歩いて10分ほどの住宅街にある、赤いひさしが目印のパン屋さんだ。オーナーシェフである山本一歩さんは「のんびりとパンをつくりたかった」と、目の前が公園の気持ちの良い角地にお店を開いた。縁もゆかりもない土地だったが、開業前に1時間だけ公園で街を観察していたとき、話しかけてくれた街の人がとても感じがよく「いい街だなぁ」と、この場所での開業を決めたそうだ。もともとはパンに興味がなかったという山本さんだが、高校時代の恩師のすすめでパン屋さんに就職。幼いころからものづくりが好きだったこともあり、長く続けられる仕事としてパン職人の道を歩み始める。何軒かのパン屋さんで職人として腕を磨く中で、“おいしいもの”を突き詰めたいという想いが生まれ、誕生したのが「コ―デュロイ」だ。

真っ白なタイル、清潔なオープンキッチン。厨房内でお客さんが買い物をしているイメージにしたかったという山本さんの言葉通り、「コ―デュロイ」の厨房と売り場の間には壁がない。“丸見え”であることによって、お客さんとの会話も自然と増え、お客さんもつくっているところを間近に見られることで安心して選べる。

「コ―デュロイ」には、たくさんのやさしさと心配りが散りばめられている。まず、パンそのものがやさしい。「地味でも良いから、飾らない毎日食べたいパンを」というつくり手の想いが込められたパンが日々55種類ほど並ぶ。お店に入るとまず目を引く特注の木製パン棚は、パンへのやさしさの賜物だ。パン棚はスライド式のガラスの扉で、パンが乾燥しないようになっており、ストックのパンは引き出しに収納されている。なるべく美味しい状態で食べてもらえるように工夫されたパン棚には、手描きのパンのプライスカードがパンと共に並ぶ。名前そのものがパンの説明になっていてとてもわかりやすい。つくり手目線の情報を詰め込むのではなく、お客さんの目線でつくられたやさしい心配りのひとつだ。店内には荷物おきのかごがあり、ゆっくりとパンを選ぶことができるのも嬉しい。

「コ―デュロイ」は、子連れのお客さんが多く、子供の足場となる小さな椅子がさりげなく置かれているなど、小さなお客さんへの配慮も欠かさない。皆、お気に入りのパンがあるようで、楽しそうにパンを選ぶ姿が印象的。「初めてのおつかいに選んでくださることも多く、本当に嬉しい」と、山本さん。初々しいどきどきを思い出させるような、記憶に残る思い出の一軒で在ることは、この街の未来に繋がっていくのだと思う。

焼き立てパンを買って、向かいの公園でパンピクニック!帰り際には、お店に「ごちそうさまでした」と、ありがとうの恩返しを忘れずに。きっとあなたも、おだやかで幸福な気持ちで満たされるはず。

Photo by: Tomohiro Mazawa

CORDUROY(コ―デュロイ)

住所:東京都江戸川区南篠崎町2-3-4
電話:03-6638-8303
営業時間:木~月 6:00~19:00
URL:http://blog.goo.ne.jp/corduroy-bakery